今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
でも、この懐かしい空間で、将来が決まるとなれば弱虫な俺はそうなるのも案の定だ。
「チッ……それで、なんのようだ」
「天音さんと、婚約をさせていただきたくきました」
「決定よ!!日翔ちゃんの息子の久遠くんなら大賛成よ!!!!!!」
全てのことを察したと思われる天乃さんが即答でそう言ってくれた。
日翔とは、俺の母親の名前だ。
「……天乃、ちょっとふたりにしてもらえるか?」
「あっ……!うん!」
にこにこと天乃さんは優しく微笑んだ。
……本当に天音と似てるな。
天音も大きくなったら、ああいう顔になるのかな。
「……それでな」
「はい」
「お前、重いらしいな」
「誰から聞いたんですか?」
なんだろう、いまとてつもなくアイツを殴りたい。
「颯だ」
……やっぱりな。
アイツ、明日潰す。
「そうですか。愛が重い男に天音さんは無理ですか」
「いや、そう言うわけではない」
「じゃあどういう……」
なんだろう、この人。
俺が思ってた嫌がられる理由、じゃあない気がする。
「愛が重いに越したことはないな。……じゃあ、天音が他の男と喋ってたらどうする」
「ソイツを裏から社会的に消します」
「天音を泣かせていいのは」
「俺だけです」
「天音に嫉妬は」
「させたいけど極力させないようにします」
「浮気は」
「天音がしたら男は社会的に人生モロども消します、でも天音が悪いわけないので天音には軽くお仕置きするだけです、で、俺はなにがあってもしません、した時は自殺してもいいです」
……なんなんだこのやりとり。
「……合格、だ……ここまで俺と同じ意見だとは……」
俺はなんの茶番をしているんだとも思いながら、素直に思ったことを認めてもらえたようで嬉しかった。