今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

「じゃあな久遠」

「ありがとうございました」


早く帰って、屋敷の設計図を描き直さないと。

そう思い天音の家を出て、外で待たせている車に乗った。


次の日。


久しぶりに父親が姿を表したので、協力を仰ぐために、父さんの部屋にやってきた、の、だが……。


「ふふっ、日翔ちゃんかわいーね」

「もう、私を見るんじゃなくて久遠くんを見て!!」


なんだかイチャついてる様子。


どうでもよくて、部屋のドアを勢いよく開ける。

「げっ……!?久遠くん!?」

「……タイミングが悪いな」

「……嘘だろ」


なんで俺のアルバムなんか見てんだよ。


「なにやってんだよ」

「い、いやぁ〜今日は久しぶりに永遠さんが家にいるからと思って」


あーだる……。

俺は小さい頃の自分が嫌いだった。

性格も見た目も、全てが嫌いだ。


「……で、要件はなんだ?」

「……実は、天乃さんと尊さんから契約書にサインしてもらうことに成功して、父さんに頼みたいことがある」

「……僕の可愛い日翔……。ここでいい子に待っててね」

「け、ケーキ食べてきまーす……」


父さんは母さんの頭を撫でるが、母さんは嫌な予感がするのかこの場を立ち去ろうとした。

が、父さんにガッシリと手を握られて、大人しくソファに座った。


……なんだか父さんも尊さんも似てんな……。

それに母さんのも天乃さんも似てる気がするし、なんとなく仲がいい理由がわかった気がする。


< 87 / 257 >

この作品をシェア

pagetop