今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。
ま、まだ婚約しただけで、しかも半ば強制的に……。

「旦那様なんかじゃないよ……!」

「……」

……くくっ……。

どうしてそんなに可愛いの……?

久遠くんはうるうるした目で私を見つめる。


「……わ、わかった……でも、だめ……」

「……なにがよくてなにがだめ?」

「ええっ……」

ど、どっちも、だめ……だけど……。


「……チッ。天音ちゃん、ちょっとしつれー」

「え?きゃっ……!?」

理人先輩になにかを言われたかと思えば、ひょいとお姫様抱っこをされた。

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