HONEYHOLIC(2)運命ウエディング~身代わり見合いの代償は溺愛~
「逃げるなんて誠意がないぞ」

慣れない着物姿で自分の思った通りに体が動かなかった。
彼も腰を上げた。
そして、瞬く間に私の前方を塞ぎ、硝子に背中を押し付けられた。

こちら側の不手際は明確で、立場は弱かった。

私たちは至近距離で見つめ合う。

ブランドのスーツを卒なく着こなす長身の彼。

父親譲りのグーズグレーの二つの瞳が私を見つめる。

メディアを牛耳る力の強さに比例して、彼の存在感も強烈で圧倒された。

「俺に近づく女性は媚びた感じの女性が多いが…君は違うな…」

私はモデルや女優じゃない。
彼にねだって欲しい物を手に入れる欲もない。
無欲な私は彼の興味をそそったようだ。



< 12 / 155 >

この作品をシェア

pagetop