最強守護騎士の過保護が止まりません!~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~
 もう充分に恩義は返してもらったというのに、それでもまだ、傍にいてくれる。
 自分は家族に愛されていないと知っても、「悪役令嬢」にならずにすんだのは、こうして彼が、セシリアを大切に守ってくれていたからだ。
 父の強すぎる愛を間近で見てきて、愛というものが恐ろしいと思ったこともある。
 誰かを愛して、父や母のようになるのが怖かった。
 だからずっと、自分の気持ちに気付かないようにしていた。
 でも、今ならわかる。
 誰よりも大切なのは、セシリアも同じだ。
「アルヴィン」
 名前を呼ぶと、縋るような視線を向けられた。
「あなたが危険な目に合うのが、怖いの。ほんの少しでも、あなたを失う可能性があると思うと、涙が溢れてしまうの」
 二十九年間生きてきた前世でも、知ることのできなかった感情。
 誰かに憧れたことはある。
 アイドルや俳優に夢中になった時期もあった。
 でも上嶋蘭は、誰かを深く愛することを知らないまま、死んでしまった。
 そしてセシリアに生まれ変わって、こんなにも切なくなるくらい、誰かを愛することを知った。
「だってわたしは、アルヴィンのことが好きなの。誰よりも、大切なのよ」
< 188 / 318 >

この作品をシェア

pagetop