最強守護騎士の過保護が止まりません!~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~
「……ないわ」
 父と母にそんな扱いを受けたことはない。
 セシリアは大きく首を横に振る。
「そうか。だったら大丈夫だ」
 アルヴィンは安堵したようにそう言うと、セシリアに言い聞かせるように言った。
「大人は、俺たちが思っているよりも余裕がない。約束を忘れることもある。でも、疎まれていないなら殺されることはない。大丈夫だ」
「こ、殺され……」
 慰めようとして言ってくれたらしい彼の言葉に、セシリアは激しく衝撃を受けた。
 いくら誕生日を忘れられたからといって、さすがに両親から危害を加えられるなんて思ったことはない。
 でもアルヴィンの口調はあまりにも淡々としていて、まるで自分の体験談を語っているかのようだ。
 いや、本当にそうなのかもしれない。
 だってこの年でそこまで達観しているなんて、普通ではあり得ない。
「それに暴力を振るわれたり食事をもらえなかったりって、普通に虐待よね? 間違いなく通報案件だわ」
 そんな言葉を口にした途端、ふいに前世の記憶が蘇った。
(あれ、わたし……。わたしって、誰だっけ)
 虐待とか通報とか、セシリアは知らない言葉だ。
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