甘く響くは君の声。
「ーーなぁ、」
声を掛けられて条件反射的に振り返ると、大石先輩と初めて目が合ってしまった。
サラサラの黒髪に切長の黒い瞳、シュッとした高い鼻に形も発色も良い唇。
背も高くて色気もダダ漏れ。
金髪の君が居なかったらわたしもイチコロだったかも知れない。
「おい」
大石先輩の言葉に見惚れていた思考がハッとなった。
「す、すみません。少しボーッとしてしまって。な、何かっ?」
「お前、コトリって言うのか…?」
それを聞いてああとなるわたし。
「小鳥遊って書いて『たかなし』って読むんです」
これは本当によく聞かれる質問だ。
最初からスラッと読めちゃう人は同年代だとまず居ない。
「へぇ。…コトリって、あだ名みたく誰かにもう呼ばれてたりする?」
「?いえ、呼ばれてないです」
大石先輩の意図が読めないけれど、正直に答えると先輩はニヤッと笑って、
「じゃあ今日からお前は『コトリ』な。これ、俺専用の呼び方だから」
「えっ!?」
「じゃあ、またな」
抜群の破壊力がある笑顔を見せたと思うと、わたしの頭をポンポンして何故かご機嫌で去っていった。