甘く響くは君の声。
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「翼ちゃん、帰ろーっ!」
放課後になって、早々と帰る準備を済ませて
前の席の翼ちゃんの正面に回ると、見るからにズドーンと沈んでいて。
「…ど、どうしたの?」
何事かとオロオロしながら訊いてみると、
「…ダンス部の新入部生の集まりと日直がダブった…。日直をサボるわけには行かないし、終わった…」
ぶわっと翼ちゃんのその綺麗なアーモンド型の瞳から涙が溢れる。
「え、日直はもうひとりいるんじゃ…」
「帰っちゃったのよ…!あの女、あたしの事目の敵にしてるから完全に嫌がらせだわっ」
きぃぃぃっ!!!と今度は険しい顔付きでハンカチを口に咥えて引っ張った。
翼ちゃんの仕草って時々昭和なんだよね。
「じゃあさ、日直の仕事は私がやっておくから翼ちゃんは部活の集まりに行っておいでよ」
「そんな事させる訳にいかないわよっ」
「大丈夫だよ。日直の仕事なんてそこまで大変じゃないし。ねっ?」
にっこり笑って見せると、翼ちゃんはまた大粒の涙を零しながら私に抱きつくと、
「っ今度、ゆらのが好きなクレープ奢る…!」
「ははっ、うん!ありがとう」
翼ちゃんはもう一度私をぎゅっと抱き締めると笑顔で教室を出て行った。