甘く響くは君の声。
さてと。
静まり返った誰もいない教室で黒板を綺麗にして日報を書いていると、
「お。小鳥遊ひとりか?」
ひょっこり教室に顔だけ出したのは吾妻先生。
「今日の日直はお前じゃねぇだろ」
「はい。翼ちゃんが都合悪くなっちゃって代わりに。…若田(わかた)さんは帰っちゃったみたいで、」
「ああ?ったく、しょうがねぇなぁ」
「どうかしましたか?」
「ん、これを日直のふたりにやってもらおうと思ったんだよ」
よいせっ!と現れたのは先生が抱きかかえている大量の用紙。
「こっ、こんなに!?」
「そ。これ、お前ひとりじゃ無理だろ。高杉まだ学校にいんだろ?呼び出すか」
「や、ややっ!わ、わたしひとりでやりますっ!」
「はぁぁ?そんなん無理に決まってんだろ。日が暮れちまうぜ?」
暗くなるまで生徒を居残りさせると色々厄介なんだよなぁ。と、先生は難しい顔してる。
「大丈夫ですっ!すぐに終わらせますんで!」
「…そうか?じゃあ任せるけど、日が暮れる前には帰れよ!?」
「はいっ」
疑いの目をしたまま先生は教室を出て行って
わたしは「むんっ!」と気合を入れて作業に取り掛かった。