甘く響くは君の声。
校門を出る頃にはもう夜がそこまでやってきていて。
時計を見れば18時をさそうとしていた。
ヤバイ、うち門限19時だから早く帰らなきゃ!
「ーー小鳥んち。どっち?」
「え?あ、こっち。です…」
大石先輩が長い指で色んな方向をさすから、私も短い指で遠慮気味に自宅の方角を指差した。
「じゃあ行くか」
「えっ、えっ!?」
言うなり私の家の方角へ向かって歩き出す先輩にビックリして慌てて駆け寄り、訊く。
「あのっ、先輩もこっちなんですか?家」
「…まぁ」
…この反応からして違うな。
「わたし、大丈夫なので!」
「俺が無理」
「…え?」
無理とは?
「心配だって言ってんのっ。ほら、行くぞ」
暗くなり始めた景色の中でも分かったよ。
先輩の耳が赤くなったこと。
優しい。
歩幅だってほら、私に合わせてくれてる。
「ふふっ」
「なんだよ、」
「先輩って世話好きなんですね」
「はぁ?」
朝の印象と今とじゃ全然違う。
こりゃモテるわけだ。
「でも先輩?世話を焼くのは好きな女の子だけにした方がいいですよ?みんな勘違いしちゃいます」
「……」
「え?いま何か言いました?」
「なんでもねぇよ。ほら、置いてくぞ」
何かボソッと言った気がしたんだけどな。
そうして先輩は私の家の前まで送り届けてくれて、そのまま来た道を戻って行った。