甘く響くは君の声。
「じゃあ、行ってくるね」
タタッと小走りで体育館裏に向かった私の後ろ姿を見ていた人が、翼ちゃん以外にもうひとりいたことなんて知らずにーー。
体育館の裏に着くとそこは薄暗くジメッとしていて、それだけで嫌な感じがするのに、やっぱりというかそこには派手な身なりした女生徒が4人ほどいて、全員凄い顔つきで私を睨んでいる。
「お前が『小鳥遊ゆらの』?」
初対面の人からこんなに敵意のこもった「お前」呼ばわりされるのは初めてだな…。
「そうですけど…、何の用ですか?」
「しらばっくれてんじゃねぇよ!」
余りの大声に身体がビクリと跳ねる。
「お前、燿とどういう関係なんだよっ!」
「よう?」
「大石の名前だろうがっ!」
「あ、大石先輩の名前だったんですね。…私、先輩の名前も知らないんです。そんな状態でどういう関係も何もないとは思いませんか?」
…やっぱり先輩絡みか。
去勢を張るので精一杯。
声が震えないようにするので精一杯。
脚は、立っているだけで精一杯。
…怖い。
右奥の一際(ひときわ)派手なギャル、バールのような物を持っているのがチラリと見えてしまったのだ。