甘く響くは君の声。
「よぉーしっ!ゆらののこの恋、翼様に任せなさいっ!」
「え?」
いきなり拳を突き上げ、高らかに声を上げる翼ちゃん。
「あたしがゆらのの恋を成就させてあげましょう!」
「えぇっ!?」
ひたすらビックリするわたしに「良い案があるのよっ」と自信満々に人差し指を立てた翼ちゃんはニヤニヤしながら妄想にふけってしまった。
い、嫌な予感しかしないなぁ…。
若干引きつつも、こうなった翼ちゃんはもう誰にも止められない事を知っているわたしは何の覚悟かよくわからない覚悟をしたのだった。
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気付いたら『彼』が居た土手に立っていた。
桜もすっかり散って、透けるような新緑が爽やかな風を運んできていて、わたしは思わず目を瞑(つむ)る。
そしてうっすらを開けた双眸(そうぼう)に飛び込んできたのは、あの人の後ろ姿。
「っ!!!」
声にならない叫びを上げ、彼の元へと全速力で走った。
今度こそっ、話しかけなきゃ!
それで、名前聞いて、わたしも名乗って!
それから、それからーー!!!
ハァハァと息が苦しくなるけど、そんなのお構いなしだ。
もう少しで彼のところへーー!
彼の方へ右手を伸ばす。するとくるりと彼がこちらへと振り向いた。
顔が逆光でまるで見えないなか、彼が口を開きわたしに向かって確かにこう言った。
「ーー浮気者」