わたがし

 
 古い家は血を絶やさない為、同じ血を持つものと子をなす。

 ほかの血を入れ、混ざることもない。

 純粋な鉛の様な赤黒い髪を、耳にかけなおし、都留(とめ)はフンッと鼻を鳴らした。

 「まぁ、いいわ。私久しぶりに外に出たいの」

 ああ、なんたることか。

 走右が眉間にしわを寄せたくなるのをこらえて聞いた。

 「庭の散策ならお供いたします」

 「庭は外とは言わないわ」

 すかさず言われてしまい、思わずため息が零れた。

 「それは外界(がいかい)を見て回りたいということですか?」

 「だからそう言ってるじゃない」

 最後に屋敷を出た日から数えれば、そろそろかとは思っていた。

 数年の単位でしか屋敷から抜け出せない彼女のことをおもえば、暇を持て余しそんな発想に至ることも頷ける。

 しかし。

 
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