囁きと蜜
砂利に押し付けていたため出血し痛みがあるのだと思った。
立ち上がったと同時に体が左へ傾き、あえなく地に顔から伏した。
見れば、左足が膝からなくなっていた。
「え?」
理解できない事象が起きたと、脳が停止しているような感覚。
あとから情けの様な痛みがにじり寄ってくることよりも、自身がもう、剣をとれないことの方が痛かった。
両肘をつき顔を上げれば、無様な自分を憐れむような目が上からのぞいていた。
「もう、お前には私に復讐する術すらない。」
どうだと言いたげな口ぶりに、怒りがわいている。
それよりも切り離された左足が、女の足元に落ちていることが今更ながらに視界に入ったことに動揺を覚えた。
「お前たちの全て、希望を抱ける余裕もないくらい。私から奪った全てを奪い返し、目の前に丁寧に並べ散りばめ飾りつけてやる。私がそうされたようにな!」
「私たちが何をしたっていうんだよ!」
女は俯くので、降りしきる雨粒が前髪を伝い落ちていく。
「お前ではない。でも私から奪ったやつらの仲間であるお前は、あいつらも同じ。全て奪い全て壊し全て切り刻んでやる」