僕惚れ②『温泉へ行こう!』
「き、金貨?」

 しりとりってこんなに照れくさい遊びだったかしら?

 そんなことを思いながら、思いついたままの言葉を口にしたら、「可愛い」って耳朶(じだ)をペロリと舐められて。

「んっ」

 私は思わず変な声を漏らしてしまう。

 熱を持った耳を慌てて片手で押さえてから、もう、いっそのこと色気のない言葉を言ってやるんだから!と考えて「石垣!」と言ってみた。

 なのに――。

「綺麗……」

 うっとりとした声音で理人にそうつぶやかれて、唇を割り開くように指の腹でなぞられた私は、もうしりとりなんてどうでもいい、と思ってしまっていた。

「い……イチャイチャ……したいな? ――ダメ?」

 綺麗、の「い」を受けたわけではないけれど、私はトロンとした声音でそう言うと、自分から理人にキスをした。

 停電、いつになったら直るかな。

 雪に覆われた町はしんと静かで……私と理人の息遣いだけが、まるで世界の全てみたいに思えた。



  END(2020/02/24)
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