僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 ここまでの道すがら、近くにコンビニがあったっけ。

「何か買いに行こうよ」

 洗濯も乾燥も稼働中はロックがかかっているから中身が取り出される心配はないよ?

 そう言ったら、理人はやっと承知してくれた。



 それでも「せっかく遠出をしたのにコンビニでいいの?」と乗り気ではなかったので、「夜はご馳走でしょう?」と告げてみた。

 実際、予約した旅館の料理は美味しいと評判なんだ、と旅行前に理人が言っていた。

「だったらお昼は軽めのほうがいいし、ね?」

 ニコッと笑って理人の手に軽く触れたら、その手をギュッと握り返された。

 その力が結構強くて。

「……理人?」


 どうしたの?と見つめ返したら「葵咲(きさき)、お願い。余り(あお)らないで。またしたくなる」って……。どれだけなの。


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