僕惚れ②『温泉へ行こう!』
*チェックイン
 洗濯が終わった後、ほんの少し予定通りの観光をして……18時に旅館にチェックインした。

 たった1日なのに、物凄く濃厚な時間を過ごした気がする。

 夕飯は18時半にお願いして、とりあえず部屋に荷物を下ろしてしばしのんびりしようということになった。

 フロントで渡されたカードキーでドアを開錠して部屋に入る。板張りの廊下を抜けた先は全面琉球畳の敷かれた和モダンな空間だった。

 ベッドはセミダブルサイズがふたつ。

 和室にあっても、背の高くないベッドは違和感なく空間に溶け込んでいた。

 窓際には丸い座卓が置いてあって、その傍に(とう)で出来た座椅子が2脚。

 座卓の上に丸い茶櫃(ちゃひつ)があって、その中に茶器などが入っていた。お湯は傍に置かれた電気ポットに沸いていて、そこから使ってくださいと仲居さんから説明を受けた。

 せっかくなので、それらを使ってお茶を注ぐと、理人(りひと)と自分の前に置く。

「あまり上手に()れられてないかもしれないけど」

 何となくこういうことをしていたら、夫婦みたいだなとか思って、やたらと照れくさくなる。

 急須(きゅうす)は割と小さめで、2人分のお茶を()ぎ分けると空っぽになってしまった。

 理人のほうを向いて座っているのが何だか気恥ずかしくて落ち着かなかったので、照れ隠しで茶殻(ちゃがら)を茶こぼしに捨てたりして誤魔化す。

「食事が済んだら一緒にお風呂、入ろうね」

 そんな私に、お茶を飲みながら、理人がまるで「いい天気だね」って話すみたいにさり気なく言った。
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