僕惚れ②『温泉へ行こう!』
葵咲(きさき)、口もいいけど……どうせイクなら僕はこっちで、がいい」

 理人(りひと)が、私の下に触れながら言う。

 唐突に、ちゅぷっと指先を身体の中に沈められて、予期せぬ刺激に思わず腰が浮いてしまう。

 私は、調子に乗って完全に油断していた。

 緩急(かんきゅう)をつけて抽送(ちゅうそう)を繰り返されて、その度に上がるいやらしい水音に、恥ずかしくて(たま)らなくなる。

「あっ、あ、あんっ、やっ」

 一生懸命足を閉じようとしたけれど、その度に理人にイイところを刺激されて、身体がビクリと跳ねる。

「――さっきの、仕返し」

 私の反応を見てニヤリと笑うと、理人が唐突に私の中から指を引き抜いた。

「んっ、やあぁっ」

 もっと欲しいようなもどかしい気持ちがしたけれど、それはさすがに言えない。

「とりあえず、一旦休憩してお風呂、()かろう?」

 理人が、勝ち誇ったような顔をして、洗面器を手に取った。

 理人は、もう一度お互いの身体にかかるようにかけ湯をすると、私の手をとって、そっと浴槽に誘う。

「高さがあるから気をつけて」

 床に埋め込まれたわけでもなく、ただ置いてあるだけに見える信楽(しがらき)焼きのつぼ湯は、結構深くて縁の高さもあった。

 理人が(うなが)すままに、私は恐る恐るそれをまたぐ。


 お湯は源泉かけ流しらしく、滔々(とうとう)と浴槽を満たし続けている。
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