僕惚れ②『温泉へ行こう!』
理人の想い
「理人?」
どこか様子のおかしい理人をゆるゆると振り返ると、私は恐る恐る呼びかけた。
理人は何も言わずに私を抱き上げると、檜の床の洗い場に下ろして、黙々と身体を洗ってくれる。
温泉に来る前に想像していた、楽しく二人で洗いっこ、みたいな雰囲気には全然ならなくて……私は何となくソワソワと落ち着かなかった。
「あの、理人……?」
無言で私を綺麗にしてくれる理人に、もう一度呼びかけてみる。
でも、理人は何か思いつめたような表情で作業に専念していて。
私はその雰囲気がどうしても堪らなくて、泡だらけの身体のまま理人の真正面に陣取った。
そうして彼の顔をギュッと両手で挟み込むと、真正面から理人の目をじっと見つめてもう一度呼びかける。
「理人……!」
そこでようやく理人の表情に変化が起きた。
「……っ!」
突然の私の暴挙に、驚いたように大きく目を見開くと、次の瞬間、慌てて私から視線を逸らすように目線を下向ける。
「理人、お願い。こっち向いて?」
私はめげずに畳み掛けた。
「……葵咲」
私の真剣な視線に、逃げられないと観念したのか、理人が私の名前をぽつりとつぶやいてこちらを見る。その声がとても切なげで、苦しそうで。
「どうしちゃったの? さっきから変だよ?」
お風呂に入るまではいつも通りの理人だった。というか、お風呂に入ってからも最初のうちは変わりなかったはずだ。
おかしくなってしまったとしたら……。
「ゴムなしでしちゃったこと、そんなに反省してるの?」
どこか様子のおかしい理人をゆるゆると振り返ると、私は恐る恐る呼びかけた。
理人は何も言わずに私を抱き上げると、檜の床の洗い場に下ろして、黙々と身体を洗ってくれる。
温泉に来る前に想像していた、楽しく二人で洗いっこ、みたいな雰囲気には全然ならなくて……私は何となくソワソワと落ち着かなかった。
「あの、理人……?」
無言で私を綺麗にしてくれる理人に、もう一度呼びかけてみる。
でも、理人は何か思いつめたような表情で作業に専念していて。
私はその雰囲気がどうしても堪らなくて、泡だらけの身体のまま理人の真正面に陣取った。
そうして彼の顔をギュッと両手で挟み込むと、真正面から理人の目をじっと見つめてもう一度呼びかける。
「理人……!」
そこでようやく理人の表情に変化が起きた。
「……っ!」
突然の私の暴挙に、驚いたように大きく目を見開くと、次の瞬間、慌てて私から視線を逸らすように目線を下向ける。
「理人、お願い。こっち向いて?」
私はめげずに畳み掛けた。
「……葵咲」
私の真剣な視線に、逃げられないと観念したのか、理人が私の名前をぽつりとつぶやいてこちらを見る。その声がとても切なげで、苦しそうで。
「どうしちゃったの? さっきから変だよ?」
お風呂に入るまではいつも通りの理人だった。というか、お風呂に入ってからも最初のうちは変わりなかったはずだ。
おかしくなってしまったとしたら……。
「ゴムなしでしちゃったこと、そんなに反省してるの?」