僕惚れ②『温泉へ行こう!』
ハプニング
迂闊、だった……。
同じフロアにあるし、大丈夫だよねと思って一人で出てきたけれど、実は私は結構な方向音痴で――。
この旅館は一階だけでも四棟の宿泊棟と、本館の大浴場、売店スペース、果ては宴会場などに枝分かれしていて、私たちが泊まっている露天風呂付の客室はその中でも結構奥まった場所に位置していた。
理人と一緒に歩いたときには何とも思わなかったけれど、立地によっては数段の階段を上がり下りしたり、スロープ状の通路を歩いたりしなくてはいけない。
棟の境目にはそれと分かる継ぎ目が残っていて、床や天井の様相がそこを境に変化する。
そういうところを進む方向の確信もないままにウロウロしているうちに、私はすっかり迷子になってしまった。
天井や壁面に設置された標識や館内案内図を見ても、大まかな現在地しか把握できなくて……。
いったい自分がどう動けば売店に向かえるのか……はたまたどちらに進めば元居た部屋に戻れるのか、さっぱり分からなくなってしまった。
恥ずかしいけれど理人にSOSを出すしかないのかも。
そこまで考えて、でも……と思う。
彼の性格を考えると、目覚めていて連絡をよこさないことは考えられなかった。未だ何のリアクションもないと言うことは、理人はまだ眠っている可能性が高い。
だとしたら起こすの、申し訳ないな。
あれこれ考えて、スマホを手に立ち尽くしていたら、突然後ろから呼びかけられた。
「……丸山?」
同じフロアにあるし、大丈夫だよねと思って一人で出てきたけれど、実は私は結構な方向音痴で――。
この旅館は一階だけでも四棟の宿泊棟と、本館の大浴場、売店スペース、果ては宴会場などに枝分かれしていて、私たちが泊まっている露天風呂付の客室はその中でも結構奥まった場所に位置していた。
理人と一緒に歩いたときには何とも思わなかったけれど、立地によっては数段の階段を上がり下りしたり、スロープ状の通路を歩いたりしなくてはいけない。
棟の境目にはそれと分かる継ぎ目が残っていて、床や天井の様相がそこを境に変化する。
そういうところを進む方向の確信もないままにウロウロしているうちに、私はすっかり迷子になってしまった。
天井や壁面に設置された標識や館内案内図を見ても、大まかな現在地しか把握できなくて……。
いったい自分がどう動けば売店に向かえるのか……はたまたどちらに進めば元居た部屋に戻れるのか、さっぱり分からなくなってしまった。
恥ずかしいけれど理人にSOSを出すしかないのかも。
そこまで考えて、でも……と思う。
彼の性格を考えると、目覚めていて連絡をよこさないことは考えられなかった。未だ何のリアクションもないと言うことは、理人はまだ眠っている可能性が高い。
だとしたら起こすの、申し訳ないな。
あれこれ考えて、スマホを手に立ち尽くしていたら、突然後ろから呼びかけられた。
「……丸山?」