君とベビードール



「…及川くん?」



呼びかけたあたしに、おはよう。片手を上げてみせた。



「…ここ、どこかな?」


「俺んち。あの後、清水潰れちゃって。俺んち近いから、連れてきたんだよ。」



床に着いた片手に、体重を預けて少し、顔を傾ける及川くん。



「…ごめんね。なんかあたし、めんどくさくて。」


苦笑しながら謝ったあたしに、



「いや。謝るのは、俺の方かも…。」



歯切れ悪く答えた。
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