君とベビードール
「だから、大丈夫。『准さん』って、柳井のことだろ?」
聞かれて、思わず頷いたあたしに、にっこり笑ってくれた及川くんは、
「あー、ほんとに負けだわ。時を越えて二度目の完敗。」
って、言葉を切って。
「ほら。きっと待ってるって。1人で大丈夫だろ?俺、送ってやりたいけど、柳井に殺されるわ。」
あたしの背中を押してくれた。
「土砂降りだから気をつけんだぞ?この傘持ってけ。」
あたしの手に傘を押しつけるように渡してくれた。
「返さなくて、大丈夫だから。せめてものお詫び。」
だから、キスしたことは、内緒な。って、いたずらっぽく笑ってくれた。