君とベビードール



「だから、大丈夫。『准さん』って、柳井のことだろ?」



聞かれて、思わず頷いたあたしに、にっこり笑ってくれた及川くんは、




「あー、ほんとに負けだわ。時を越えて二度目の完敗。」


って、言葉を切って。



「ほら。きっと待ってるって。1人で大丈夫だろ?俺、送ってやりたいけど、柳井に殺されるわ。」



あたしの背中を押してくれた。



「土砂降りだから気をつけんだぞ?この傘持ってけ。」



あたしの手に傘を押しつけるように渡してくれた。



「返さなくて、大丈夫だから。せめてものお詫び。」



だから、キスしたことは、内緒な。って、いたずらっぽく笑ってくれた。
< 220 / 240 >

この作品をシェア

pagetop