君とベビードール
「…じゃあ、清水。ありがとう。好きだったよ。」
はにかんで、右手を差し出してくれた。
握手してくれた右手から、及川くんの優しさが伝わってくる。
「ありがとう。」
「おう。幸せになんだぞ。」
お互いに笑いあって、手を振ってドアを閉めた。
階段を降りて、土砂降りの雨の中、開いた傘は
…藍色。
あたしと准さんの思い出の大切な色だ。
大丈夫大丈夫。きっと大丈夫。
あたしは、雨の中准さんの元へと走り出した。