君とベビードール



一歩、また一歩とゆっくり近づくあたしに、



「おいで」



一言だけ、言って。



抱きついたあたしに、


「おかえり。」


いつもの優しい穏やかな声で、言ってくれた。



「じゅ…さん…」



あたしを抱きしめかえしてくれた准さんからは、雨と混じってベビードールの香りがした。



部屋に入って、あたしが着替えているあいだにお茶をいれてくれた准さん。


テーブルにカップを置くと、あたしの隣に静かに腰掛けた。



触れるか触れないかの距離がもどかしい…。
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