私を抱かないと新曲ができないって本当ですか?~イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い~
はじまり
音楽が始まった。
今、一番好きな曲『ブロッサム』。
私、瀬戸希は、舞台袖からマネジメントしているTAKUYAが歌い出すのを見つめていた。
バックスクリーンに開花するさまざまな種類の花が映り、TAKUYAの甘いマスクにピンクのスポットライトが当たる。
観客が曲に気づいて、わぁっと歓声をあげた。
今日は、TAKUYAの念願の譜道館ライブだ。
デビューして二年。地道に活動を続け、ファンを増やして、ここまで来た。なかなか早い方だと思う。私的にも初めて一から担当するアーティストなので、思い入れがある。
それに──
(あぁ、本当に素敵な曲。藤崎さんに楽曲提供してもらえて、本当によかった)
しみじみと思いながら、歌に耳を傾ける。
藤崎東吾は、歌良し声良し顔良しの作詞作曲家で、たまにセルフカバーで歌うとミリオンセラーになるほど人気のカリスマミュージシャンだ。
もともと藤崎さんの大ファンで、彼が唯一出しているアルバムを暗唱できるほど聴き込んでいた私は、藤崎さんの曲が欲しくて欲しくて、一年がかりで社長を説得して予算をもらい、今度は弱小プロダクションのそこそこ人気の――人気急上昇中だけど――アーティストに楽曲提供してもらえるよう、藤崎さんを口説き落としたのだ。
(あきらめずに頑張って、よかったなぁ)
最初は当然、藤崎さんに相手にもされなかった。
挨拶から始めて、ようやく口をきいてもらえるようになって、楽曲提供の話をしたら、やっぱりけんもほろろに断られて……と道のりは長かった。
それでもめげずにお願いしつづけて、「根負けした……」とオーケーをもらえたときには、感動で泣いてしまった。生きててよかったと。
『ブロッサム』を藤崎さん自身が歌っているデモ音源は私の宝物だ。
初めて聴いたとき、やっぱり感激して泣いた。号泣した。
藤崎さんの甘いテノールの声が大好きで、実はTAKUYAが歌うより、彼の歌う『ブロッサム』の方が好きなのは内緒だ。
「希《のぞみ》さん」
その大好きな声が私の名前を呼んだ。
今、一番好きな曲『ブロッサム』。
私、瀬戸希は、舞台袖からマネジメントしているTAKUYAが歌い出すのを見つめていた。
バックスクリーンに開花するさまざまな種類の花が映り、TAKUYAの甘いマスクにピンクのスポットライトが当たる。
観客が曲に気づいて、わぁっと歓声をあげた。
今日は、TAKUYAの念願の譜道館ライブだ。
デビューして二年。地道に活動を続け、ファンを増やして、ここまで来た。なかなか早い方だと思う。私的にも初めて一から担当するアーティストなので、思い入れがある。
それに──
(あぁ、本当に素敵な曲。藤崎さんに楽曲提供してもらえて、本当によかった)
しみじみと思いながら、歌に耳を傾ける。
藤崎東吾は、歌良し声良し顔良しの作詞作曲家で、たまにセルフカバーで歌うとミリオンセラーになるほど人気のカリスマミュージシャンだ。
もともと藤崎さんの大ファンで、彼が唯一出しているアルバムを暗唱できるほど聴き込んでいた私は、藤崎さんの曲が欲しくて欲しくて、一年がかりで社長を説得して予算をもらい、今度は弱小プロダクションのそこそこ人気の――人気急上昇中だけど――アーティストに楽曲提供してもらえるよう、藤崎さんを口説き落としたのだ。
(あきらめずに頑張って、よかったなぁ)
最初は当然、藤崎さんに相手にもされなかった。
挨拶から始めて、ようやく口をきいてもらえるようになって、楽曲提供の話をしたら、やっぱりけんもほろろに断られて……と道のりは長かった。
それでもめげずにお願いしつづけて、「根負けした……」とオーケーをもらえたときには、感動で泣いてしまった。生きててよかったと。
『ブロッサム』を藤崎さん自身が歌っているデモ音源は私の宝物だ。
初めて聴いたとき、やっぱり感激して泣いた。号泣した。
藤崎さんの甘いテノールの声が大好きで、実はTAKUYAが歌うより、彼の歌う『ブロッサム』の方が好きなのは内緒だ。
「希《のぞみ》さん」
その大好きな声が私の名前を呼んだ。
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