私を抱かないと新曲ができないって本当ですか?~イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い~
お礼
ダメだと言ったのに、藤崎さんは私に口づけ、ソファーに押し倒した。
いきなり深いキスをされる。
「んっ……ん……。あぁーっ、そうだ!」
藤崎さんのキスは気持ちよくて、それに翻弄されながらも、いきなり思い出したことがあって、私は藤崎さんの頬を挟んでキスを止めた。
「そういえば、藤崎さん、ありがとうございました!」
「え、なに?」
突然止められて驚いた顔の藤崎さん。
こんな体勢で言うのもなんだけど、ちゃんと言っておかないと気持ちが悪い。
私は彼の顔を見上げて、お礼を言った。
「SNSのコメントをありがとうございます! おかげで『ブロッサム』がバズってて、すごいんです!」
「あぁ、あれね。あれは……なんでもない」
「?」
「ただ僕が思ってることを書いただけだから」
「でも、このタイミングで書いてもらって有り難いです。社長も大喜びしてました」
「それならよかった」
藤崎さんは言葉の割におもしろくなさそうな顔をして、私の頬をツンツンとつついた。
「それにしても、君はムードもへったくれもないね。わざとかな?」
「わざとなんて!」
そんな意図などなく、驚いた私に、藤崎さんは苦笑した。
「気が削がれたから、ご飯でも食べる?」と身を起こした。
「あ……、ごめんなさい」
やっぱり今言うことじゃなかったかな……。
藤崎さんの気分を害しちゃったかしら?
夢中になるとなにも見えなくなっちゃうのは、私の悪いくせだ。
(こんなふうにムードを壊していったら、すぐに藤崎さんに飽きられるんだろうな……)
シュンとする私を引っ張り起こして、今度は藤崎さんが私の頬を両手で挟んだ。
「なんでそんな顔をしてるの?」とキスをする。
その距離のまま、じっと見つめる。
(もう! そんなに気軽にキスしないでほしい。心臓がもたないから)
今日だけでも何度キスされただろう? 藤崎さんってキス魔なのかもしれない。
そんなことを思っていると、藤崎さんは私の唇を意味ありげに触れて、艶っぽく笑う。
「そんな残念そうな顔しなくても、後でたっぷりしてあげるよ」
「残念そうな顔なんてしてません!」
憤慨する私に、ハハッと笑って、彼はキッチンへ行った。
私も手伝おうとついて行く。
こげ茶のキッチンカウンターのついた対面式キッチンは広く、ペールブルーで統一されていた。二人並んでもゆとりがあり、お客さんと話しながら、料理が作れそうだ。
大きなシルバーの冷蔵庫、ポットや電子レンジさえ、デザイン性のあるもので、スタイリッシュだった。
辺りを見回している私に、藤崎さんが声をかけてくれる。
「家政婦さんがなにか作ってくれてるから、温めるだけだよ」
「やっぱり家政婦さんがいるんですねー」
「うん、通いでね」
隅々まできれいだもんなとまたキッチンを見ていると、ちょっとアピールするように藤崎さんが言った。
「自分で作ることもあるけどね」
「え、藤崎さん、料理するんですか?」
「ずっと家にいるから、暇なんだよ。今度、手料理をご馳走しようか?」
「いえ、いいです! 遠慮します!」
私は慌ててかぶりを振る。
藤崎東吾の手料理なんて、恐れ多くて食べられないわ!
そう思ったのに、彼は額に手を当て、不満そうに私を見た。
「……君って本当にひどいな」
「だって、藤崎さんが作った料理なんて、食べるのがもったいないです!」
「なにそれ」
私の答えが意外だったようで、藤崎さんが苦笑した。
そして、冷蔵庫から作り置きの料理を取り出し、レンジに入れたり、お鍋のまま入ってたお味噌汁を火にかけたりして、手早く準備をしてくれる。
ちゃんと二人分用意してあるんだ。
「はい、テーブルを拭いてきて」
手を出すタイミングがつかめず、ウロウロしてる私に、布巾が差し出された。
「はい!」
ようやくできた仕事にホッとして、テーブルを拭いて戻ると、すれ違いに藤崎さんは料理を運んだ。
私も残りのお皿を持っていく。
メニューは、ご飯、お味噌汁、白身魚の甘酢あん掛け、モヤシのおひたし。佃煮。
白身魚に乗ったパプリカのオレンジや黄色が目にも鮮やかだし、暑いので、さっぱりメニューがうれしい。
「食べようか?」
「はい、いただきます」
手を合わせて、食べ始める。
藤崎さんと隣り合わせにこうして家庭料理を食べてるなんて、不思議。
「そういえば、君は料理はするの?」
「まぁ、ひとり暮らしだから一応はしますよ」
「ご馳走するとは言ってくれないの?」
「だって、こんなにおいしく作れませんし」
「おいしいおいしくないの問題じゃないんだけどな……女の人って、すぐ料理アピールしてくるってイメージがあったけど、君は違うんだね」
「それは狙われてただけですよ」
私は苦笑いをする。
今まで数限りなく女の人に狙われてきたんだろうなぁ。
口説く必要もないくらい。
しかも、藤崎さんを狙う人なんて、相当レベルが高そう。
「君は狙ってくれないの?」
「そんなの考えたこともないですよ!」
「傷つくなぁ」
食事の手を止め、藤崎さんが目を伏せるので、慌てて弁解した。
「違いますよ! 私が藤崎さんを狙うなんておこがましくって、そんなことを考えることすらしたことがないってことです。私はただのいちファンで充分なので」
「ふ~ん、ただのいちファンね……」
藤崎さんは頬杖をついて、私をじっと見たあと、深い溜め息をついて、食事を再開した。
なにか失言ばかりしているみたい。
そっと彼のほうを窺って、私も口を動かした。
さっき、メロンパンを食べた割に、甘酢あん掛けがちょうどいい酸味でおいしくて、あっさり完食してしまう。
お皿をキッチンに持っていくと、藤崎さんが食洗機に次々と入れた。
「お鍋とかはそのままでいいから」
「でも、これくらい洗いますよ?」
「家政婦さんの仕事を取らないで」
「あ、はい」
藤崎さんに手を引かれて、リビングに戻る。
ソファーに座った彼の膝に乗せられた。
身体の線をなぞられて、彼の顔が近づく。
「ねぇ、さっきの続き、する?」
耳もとをくすぐられて、瞬時に顔に熱が集まる。それと同時に思う。
(……そうよね。私たちがやることってそれしかないわよね)
「別に、君を呼んだのはHだけが目的じゃないよ」
「!」
私の心を読んだようにそう言いながらも、藤崎さんは私に口づけを落として、手は胸を揉み始める。
(藤崎さん、言ってることとやってることが違いますよ!)
私の抗議の眼差しに気づいたようで、彼は「テレビでも見る?」とリモコンを押した。
ちょうど音楽番組がやっていた。
TAKUYAと同時期にデビューしたバンドのインタビューが流れていて、興味あるのに、藤崎さんが身体を弄るのを止めてくれないので、全然集中できない。
「もう、藤崎さん! そんなにしたいんですか?」
「……うん、したい」
少し恥ずかしそうに藤崎さんがうなずいた。その顔を見られるのが嫌だったのか、すぐに私の肩口に顔を伏せて、つぶやいた。
「あれから、どれだけ我慢していたことか……」
「たった五日じゃないですか!」
「五日も、だよ。希を抱きたくてたまらなかった。君のかわいい姿が頭から離れなくて……」
「もう、なに言ってるんですか!」
私まで恥ずかしくなって、頬が熱くなった。
抱きたいと思いながらも藤崎さんはTAKUYAのライブが終わるのを待っていてくれたのね。
契約でもなんでも、そんなに待ち望んでもらえていたのはうれしい。
私はすぐそばにある耳にささやいた。
「……いいですよ」
藤崎さんはくっと喉の奥を鳴らした。
いきなり深いキスをされる。
「んっ……ん……。あぁーっ、そうだ!」
藤崎さんのキスは気持ちよくて、それに翻弄されながらも、いきなり思い出したことがあって、私は藤崎さんの頬を挟んでキスを止めた。
「そういえば、藤崎さん、ありがとうございました!」
「え、なに?」
突然止められて驚いた顔の藤崎さん。
こんな体勢で言うのもなんだけど、ちゃんと言っておかないと気持ちが悪い。
私は彼の顔を見上げて、お礼を言った。
「SNSのコメントをありがとうございます! おかげで『ブロッサム』がバズってて、すごいんです!」
「あぁ、あれね。あれは……なんでもない」
「?」
「ただ僕が思ってることを書いただけだから」
「でも、このタイミングで書いてもらって有り難いです。社長も大喜びしてました」
「それならよかった」
藤崎さんは言葉の割におもしろくなさそうな顔をして、私の頬をツンツンとつついた。
「それにしても、君はムードもへったくれもないね。わざとかな?」
「わざとなんて!」
そんな意図などなく、驚いた私に、藤崎さんは苦笑した。
「気が削がれたから、ご飯でも食べる?」と身を起こした。
「あ……、ごめんなさい」
やっぱり今言うことじゃなかったかな……。
藤崎さんの気分を害しちゃったかしら?
夢中になるとなにも見えなくなっちゃうのは、私の悪いくせだ。
(こんなふうにムードを壊していったら、すぐに藤崎さんに飽きられるんだろうな……)
シュンとする私を引っ張り起こして、今度は藤崎さんが私の頬を両手で挟んだ。
「なんでそんな顔をしてるの?」とキスをする。
その距離のまま、じっと見つめる。
(もう! そんなに気軽にキスしないでほしい。心臓がもたないから)
今日だけでも何度キスされただろう? 藤崎さんってキス魔なのかもしれない。
そんなことを思っていると、藤崎さんは私の唇を意味ありげに触れて、艶っぽく笑う。
「そんな残念そうな顔しなくても、後でたっぷりしてあげるよ」
「残念そうな顔なんてしてません!」
憤慨する私に、ハハッと笑って、彼はキッチンへ行った。
私も手伝おうとついて行く。
こげ茶のキッチンカウンターのついた対面式キッチンは広く、ペールブルーで統一されていた。二人並んでもゆとりがあり、お客さんと話しながら、料理が作れそうだ。
大きなシルバーの冷蔵庫、ポットや電子レンジさえ、デザイン性のあるもので、スタイリッシュだった。
辺りを見回している私に、藤崎さんが声をかけてくれる。
「家政婦さんがなにか作ってくれてるから、温めるだけだよ」
「やっぱり家政婦さんがいるんですねー」
「うん、通いでね」
隅々まできれいだもんなとまたキッチンを見ていると、ちょっとアピールするように藤崎さんが言った。
「自分で作ることもあるけどね」
「え、藤崎さん、料理するんですか?」
「ずっと家にいるから、暇なんだよ。今度、手料理をご馳走しようか?」
「いえ、いいです! 遠慮します!」
私は慌ててかぶりを振る。
藤崎東吾の手料理なんて、恐れ多くて食べられないわ!
そう思ったのに、彼は額に手を当て、不満そうに私を見た。
「……君って本当にひどいな」
「だって、藤崎さんが作った料理なんて、食べるのがもったいないです!」
「なにそれ」
私の答えが意外だったようで、藤崎さんが苦笑した。
そして、冷蔵庫から作り置きの料理を取り出し、レンジに入れたり、お鍋のまま入ってたお味噌汁を火にかけたりして、手早く準備をしてくれる。
ちゃんと二人分用意してあるんだ。
「はい、テーブルを拭いてきて」
手を出すタイミングがつかめず、ウロウロしてる私に、布巾が差し出された。
「はい!」
ようやくできた仕事にホッとして、テーブルを拭いて戻ると、すれ違いに藤崎さんは料理を運んだ。
私も残りのお皿を持っていく。
メニューは、ご飯、お味噌汁、白身魚の甘酢あん掛け、モヤシのおひたし。佃煮。
白身魚に乗ったパプリカのオレンジや黄色が目にも鮮やかだし、暑いので、さっぱりメニューがうれしい。
「食べようか?」
「はい、いただきます」
手を合わせて、食べ始める。
藤崎さんと隣り合わせにこうして家庭料理を食べてるなんて、不思議。
「そういえば、君は料理はするの?」
「まぁ、ひとり暮らしだから一応はしますよ」
「ご馳走するとは言ってくれないの?」
「だって、こんなにおいしく作れませんし」
「おいしいおいしくないの問題じゃないんだけどな……女の人って、すぐ料理アピールしてくるってイメージがあったけど、君は違うんだね」
「それは狙われてただけですよ」
私は苦笑いをする。
今まで数限りなく女の人に狙われてきたんだろうなぁ。
口説く必要もないくらい。
しかも、藤崎さんを狙う人なんて、相当レベルが高そう。
「君は狙ってくれないの?」
「そんなの考えたこともないですよ!」
「傷つくなぁ」
食事の手を止め、藤崎さんが目を伏せるので、慌てて弁解した。
「違いますよ! 私が藤崎さんを狙うなんておこがましくって、そんなことを考えることすらしたことがないってことです。私はただのいちファンで充分なので」
「ふ~ん、ただのいちファンね……」
藤崎さんは頬杖をついて、私をじっと見たあと、深い溜め息をついて、食事を再開した。
なにか失言ばかりしているみたい。
そっと彼のほうを窺って、私も口を動かした。
さっき、メロンパンを食べた割に、甘酢あん掛けがちょうどいい酸味でおいしくて、あっさり完食してしまう。
お皿をキッチンに持っていくと、藤崎さんが食洗機に次々と入れた。
「お鍋とかはそのままでいいから」
「でも、これくらい洗いますよ?」
「家政婦さんの仕事を取らないで」
「あ、はい」
藤崎さんに手を引かれて、リビングに戻る。
ソファーに座った彼の膝に乗せられた。
身体の線をなぞられて、彼の顔が近づく。
「ねぇ、さっきの続き、する?」
耳もとをくすぐられて、瞬時に顔に熱が集まる。それと同時に思う。
(……そうよね。私たちがやることってそれしかないわよね)
「別に、君を呼んだのはHだけが目的じゃないよ」
「!」
私の心を読んだようにそう言いながらも、藤崎さんは私に口づけを落として、手は胸を揉み始める。
(藤崎さん、言ってることとやってることが違いますよ!)
私の抗議の眼差しに気づいたようで、彼は「テレビでも見る?」とリモコンを押した。
ちょうど音楽番組がやっていた。
TAKUYAと同時期にデビューしたバンドのインタビューが流れていて、興味あるのに、藤崎さんが身体を弄るのを止めてくれないので、全然集中できない。
「もう、藤崎さん! そんなにしたいんですか?」
「……うん、したい」
少し恥ずかしそうに藤崎さんがうなずいた。その顔を見られるのが嫌だったのか、すぐに私の肩口に顔を伏せて、つぶやいた。
「あれから、どれだけ我慢していたことか……」
「たった五日じゃないですか!」
「五日も、だよ。希を抱きたくてたまらなかった。君のかわいい姿が頭から離れなくて……」
「もう、なに言ってるんですか!」
私まで恥ずかしくなって、頬が熱くなった。
抱きたいと思いながらも藤崎さんはTAKUYAのライブが終わるのを待っていてくれたのね。
契約でもなんでも、そんなに待ち望んでもらえていたのはうれしい。
私はすぐそばにある耳にささやいた。
「……いいですよ」
藤崎さんはくっと喉の奥を鳴らした。