私を抱かないと新曲ができないって本当ですか?~イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い~
(曲の誕生に手を貸す?)

 彼を見返しながら、茫然とする。
 確かになんでもするとは言った。でも、藤崎さんは笑って聞き流してたから、まさか今さらそんなことを言われるとは思ってなかった。しかも、こんな形で。

(でも、藤崎さんの新曲が聴けるの?)

 それは私にはとても魅力的なことた。
 それにさっきの曲の続きを聴きたかった。

「手を貸すって、どうやって……?」
「だから……こっちにおいで」

 私は藤崎さんにすぐ横の小部屋に連れ込まれた。
 カチャッと鍵が締められて、閉じ込められたのに気づく。
 向かい合わせで壁に押しつけられて、唇を塞がれた。
 唇を合わせるだけのキスではなく、舌を擦りつけるような深いキスを繰り返される。
 ぺちゃぺちゃと音がするくらい舌を絡められて翻弄される。

「んんっ!」

 抵抗しようとするけど、舌はしっかり絡められ、壁と藤崎さんに挟まれている。
 強く口を吸われて酸欠のようになり、ますます頭はぼんやりして、脚の力が抜けてきた。
 思わず、彼のシャツを掴んでしまった。
ようやく唇を離した藤崎さんはふっと笑い、耳もとでささやいた。
 綺麗な顔に意地悪い表情を浮かべている。

「僕は曲がどんどんできる。君は新しい楽曲を手に入れる。悪くない取引だろ?」

(新しい、楽曲……。悪く、ない……?)

 混乱にかすんだ頭で彼の言葉を繰り返す。思考を進めるより先に、藤崎さんが歌い始めた。

「また新しい曲が浮かんだよ………LaLaLa~♪ Mumm~」

 私は一瞬で藤崎さんの歌に心を奪われる。

(その曲が聴きたい!)

 藤崎さんが耳もとでささやくように歌うから、情緒がめちゃくちゃになる。

「ねぇ、僕のものになってよ」

 歌詞のようにささやかれて、思わず、うなずきそうになる。

 ――わぁぁぁ!

 そのとき、舞台のほうから歓声が聞こえてきて、ハッと我に返った。
 TAKUYAのライブの真っ最中だというのを思い出す。

「無理です! 仕事があるので、失礼します!」

 私は力いっぱい藤崎さんを押しのけて、走って、その部屋から逃げ出した。
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