「いらっしゃい。」

花で死角になっていた、そこにいたのは美乃さんではなく、知らない男の人。人が良さそうな笑顔をわたしにむけている。

美乃さんがいると思っていたわたしは反応に遅れて笑顔であいさつを返した。



「こんにちは。あの美乃さんはいらっしゃいますか?」

さっきまでの笑顔がわたしの一言で真顔に近い薄い笑顔に変わる。多分、客じゃないと思ったのかもしれない。たしかにそうだけど。

「美乃さんは今いないよ。」

素っ気ない返事が返ってきた。

そこまで態度を変えることはないのに、そもそも誰なんだろうこの人。さすがにそんなこと聞くのは失礼だろうと思い、一旦頭の端に置く。
それよりも、美乃さんがいつ戻ってくるか聞いてそのときに合わせてまた戻ってこよう。
この人と2人っきりは気まずい。

「そうなんですね。それでは、いつ戻ってくるかわかりますか?」

その人は一瞬わたしから目を逸らしてすぐにまたわたしをみた。

「3時前には帰ってくるよ。」

壁に掛けてある時計を見ると帰ってくるまでに結構な時間があった。
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