どこか宙を見ていた視線をその人に合わせる。

「‥でしたら、美乃さんが読み切れないほど本があるとおっしゃっていたのでその本を読んで待っていてもいいですか?」

「本ね、わかった。2階にたくさんあるからついてきて。」

慌てて鍵をかけ直す。
その人はお店に入らず待っていた。

その人はが鍵をかけ終えるのをみてお店の中に入っていくわたしもその後を追った。

和室の手前にある縁側で靴を脱いでいるとお店に入った時よりも強く甘いお菓子の香りが漂っていたり靴を脱ぐ手が止まる。

「こっち。」

その人の一言で我に戻る。靴を揃えて、和室の横の廊下を通り階段を上った。
一段一段、上るたびに軋む音がして古い家の小さな良さだと思った。

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