案内された部屋は8畳ほどの広さで壁一面の本棚には所狭しと本が敷き詰められていた。
入って正面には小さな窓が一つ、そこにはウィンドウボックスがかけてあって春の花が飾ってある。そして部屋の真ん中に小さな机、座布団が二つ。

「この部屋にある本好きなようにみてもいいですか?」

廊下に立っていたその人に聞く。

「好きなようにみて。下にいるから用があったら呼んで。」

そう言って廊下を戻り、階段を下りていく。

呼んでって言われても名前がわからない、階段の方まで小走りで行く。

「あの、名前。教えてもらえますか?」

階段を下りる途中でその人はわたしを見上げる。

「遊馬優貴《あすまゆうき》。そっちは?」

「わたしは雛木誠です。」

わかったと言って、階段を下りていった。
わたしも部屋に戻っていくつか気になった本を取って机の上に重ねておいた。
どの本も少し日焼けをしていて時間を感じた。
重ねた本の中から一冊を選んでわたしは窓の近くに座り、外からの光を浴びながら読書を始めた。


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