薄く笑って、それはよかった。と答えて遊馬さんは一階に下りてしまった。

それから紅茶を飲んでもう一つスコーンを食べて手を拭いて読書を再開する。それを交互に繰り返していると時間が過ぎるのが早く、いつのまにか美乃さんが戻ってきた。

わたしはそのことに気がつくことなく本を読んでいた。美乃さんに肩をたたかれてやっとで気づく。

全ての本を元の場所に戻し、一階の和室に向かった。
そこには遊馬さんの姿はなかった。

「美乃さん、あのクッキーありがとうございます。とってもおいしかったです。美乃さんが作っておいたものですよね?」

早口にしゃべってしまう。
美乃さんは声を出して笑う。
きょとんとするわたしに美乃さんはまた笑った。

「違うわよ、これはが優貴が作ったのよ。私はこんなに器用じゃないわ。」

そうなんだ、てっきり美乃さんが作ったのかと思った。

「たぶん、あなたが来た時にちょうど出来上がったんでしょうね。できたらすぐに誰かに食べさせて反応をみるのがあの子の癖なの。」

なるほど、だから引き留めたんだ。
遊馬さんのこれまでの行動に納得する。
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