彼女は少し驚いたような顔をしてすぐに笑顔なった。

「えぇ、いいですよ。好きなときにおいで。
‥あ、そういえば名前聞いてなかったね。」

たしかにずっと話してるときわたしは彼女をおばあさんと呼んで、わたしはお嬢さんと呼ばれてた。なんでその時名前聞かなかったのかな?
なんだか面白くて笑ってしまった。

「たしかにそうでしたね。
わたしは雛木誠《ひなきまこと》って言います。」

名前を言うのはなんだか不思議と緊張した。

「いい名前ね、よろしく誠ちゃん。
私は花宮美乃《はなみやよしの》。おばあさんではなくて美乃さんと呼んで。」

いたずらっぽく声を出して笑う美乃さん。
花宮ってお花屋さんに合う苗字だな。
受験で忙しくなる今年に最高な場所を見つけたと思った。辛くなったときはここに来よう、心で小さく決めた。

「美乃さん。今日は楽しい時間をありがとうございました。また来ますね。」

自転車のスタンドを上げて歩き出そうとした。
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