あなたに、キスのその先を。
 何でも“高橋清”というお名前は、同姓同名ランキング、上位から数えて四位のお名前なんだとか。

 考えるのが面倒だったのでテキトーにつけました!と笑う健二さんを見て、何となくモヤモヤとしてしまう。

 ずっと高橋さんという人格を信じて、お仲間だと(した)っていた私の身にもなって欲しいな、とか思ってしまって。

 偽名でした、とかそんな人間は元からいませんでした、とか言われても何となく釈然としなかった。

「日織さんも課長じゃなくて兄さんに課のことを色々と教わったでしょう? あれもそういう経緯からです」

 私の気持ちを知ってか知らずか、あっけらかんとそうおっしゃる健二さんに、私は悲しい気持ちでふうっとひとつ、溜め息を付いた。

 全ては修太郎さんのため、と思えば許せる気もしたけれど……でも、でも……。
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