あなたに、キスのその先を。
実感してしまいました
「日織さん、これからどうなさいますか?」
時計をみると十四時を少し過ぎたところで。
健二さんと佳穂さんは最初からそう約束をなさっていたかのように、私達に別れを告げると、二人で連れ立ってどこかへお行きになられた。
付き合っていらっしゃるのだから当然なんだけれど、お二人の後ろ姿を見送りながら、改めて“健二さんと佳穂さんはそういう御関係なのだ”と実感させられた気がして。
修太郎さんと一緒にいることを、もう健二さんに後ろめたく思う必要なんてないんだと、そう思ったらふいに涙がこみ上げてきた。
鼻の奥がツンとして、慌てて目頭を押さえたら、修太郎さんに驚いた顔をされてしまう。
「ひ、日織、さんっ?」
人通りの多いホテル一階ロビーでのことだったので、修太郎さんは私を慌てて人目から隠すように壁際に連れて行ってくださる。
「ご、ごめっなさっ」
一度堰が切れてしまった涙腺はなかなか閉まってくれなくて。悲しいわけでも何でもないのに……むしろ嬉しくてたまらないくらいなのに……ついには呼吸まで乱れてしまって、私は自分の激情に翻弄されて戸惑う。
時計をみると十四時を少し過ぎたところで。
健二さんと佳穂さんは最初からそう約束をなさっていたかのように、私達に別れを告げると、二人で連れ立ってどこかへお行きになられた。
付き合っていらっしゃるのだから当然なんだけれど、お二人の後ろ姿を見送りながら、改めて“健二さんと佳穂さんはそういう御関係なのだ”と実感させられた気がして。
修太郎さんと一緒にいることを、もう健二さんに後ろめたく思う必要なんてないんだと、そう思ったらふいに涙がこみ上げてきた。
鼻の奥がツンとして、慌てて目頭を押さえたら、修太郎さんに驚いた顔をされてしまう。
「ひ、日織、さんっ?」
人通りの多いホテル一階ロビーでのことだったので、修太郎さんは私を慌てて人目から隠すように壁際に連れて行ってくださる。
「ご、ごめっなさっ」
一度堰が切れてしまった涙腺はなかなか閉まってくれなくて。悲しいわけでも何でもないのに……むしろ嬉しくてたまらないくらいなのに……ついには呼吸まで乱れてしまって、私は自分の激情に翻弄されて戸惑う。