あなたに、キスのその先を。
 女子中、女子高、女子大……と思春期を過ぎてからはずっと同性のなかで過ごしてきた私は、もっと性格のきつい人とも机を並べてきた。
 それに比べると、中本さんからは根っこの部分に凄く優しいものを感じてしまう。

(いつか、中本さんと一緒にお昼とか食べられたら嬉しいのですっ)

 暖かな日差しの中で、手作りのお弁当を二人で持ち寄って、おかずを交換したりして……。
 うっとりとそんなことを夢想していたら……。

「何よっ?」

 またしても束の間ドリーマーになっていた私は、中本さんの声でハッとした。

「あ、ご……ごめんさいっ。……その、中本さん、お優しいなって思って、ほんわかしてしまっていたのですっ」

 私のその言葉に、中本さんがきょとんとする。

「アンタ、それ本気で言ってるの?」

 さっき、散々酷いことを言ったのに……正気?
 私から視線をそらしてブツブツと不平を言う彼女の横顔が、ほんのり赤くなっているように見えた。

 塚田(つかだ)さんが、中本さんを信頼してお願いごとをなさった理由が、何となく分かった気がした。
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