あなたに、キスのその先を。
 屋上庭園に出ようと扉を開けると、途端、ものすごい風に見舞われた。
 突風にスカートをめくられて、思わず手で布地を押さえたら、扉の方を持つ手が手薄になってしまった。

「ひゃっ!」

 危うく強風に(あお)られたドアに挟まれそうになった私を、後ろから来た健二(けんじ)さんが助けてくださる。

(あっぶ)ねー」
 間一髪で助けられた私は、未だ恐怖でドキドキしたまま、縮こまって健二さんを見上げた。

日織(ひおり)さんに怪我なんてさせたら俺、兄さんに殺されかねないんですけど」

 言いながら、パンツより身体守ってくれないと!と叱られてしまう。

(うー。どちらも守りたいのですが……)

 思ったけれど、片方が手薄になってしまったから叱られてしまったわけで。私はしゅんとして「すみません」と謝罪する。

「で、用件は母のことですか?」

 私が言うより先に、健二さんが溜め息交じりにそうおっしゃった。

「あ、は、はいっ」

 どうして分かったんだろう?とキョトンとしたら、「あれだけ兄さんが連日家に来てれば馬鹿でも察しがつきますって」と健二さん。
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