あなたに、キスのその先を。
「どうしてそれを……?」
思わず言ってしまってから、あ、と口を押さえたけれど後の祭りで。
「やっぱり!」
そうおっしゃって私に優しい目を向けてくださったのは、お父様ではなくお母様だった。お父様はお母様の乱入に、まるで道を譲るように口をつぐまれてしまった。
「そんな気がしていたのよ。今まで興味も持たなかった携帯を持ちたいって言ったり、お出かけ前に鏡の前で長いこと身嗜みを確認したり。――あなたの想い人は職場にいらっしゃるの?」
お母様は私を咎めていらしている風ではなくて……。ただ純粋に私が好きになった方のことを知りたいだけみたいだった。
お父様が「話してご覧」と促すように頷いていらしたので、私は思い切って打ち明ける。
「あの……。私がお慕いしているのは……健二さんの……お兄様です」
緊張で身体が震えるのを一生懸命押さえながら、お父様とお母様のお顔を交互に見つめる。
すると、お二人がふっと優しいお顔になられた。
「修太郎くんか」
ややしてお父様が修太郎さんのお名前を出されて、私はそれだけでドキドキしてしまった。
「日織、あなた、彼の名前をお聞きしただけで真っ赤になるのね」
お母様が私の方へ近づいていらして、頭を撫でてくださる。
「は、はい……っ。わ、私。自分でもどうしたらいいか分からないくらい修太郎さんが好きなんです」
ハッキリとそう申し上げたら、お父様が瞳を見開かれた。
思わず言ってしまってから、あ、と口を押さえたけれど後の祭りで。
「やっぱり!」
そうおっしゃって私に優しい目を向けてくださったのは、お父様ではなくお母様だった。お父様はお母様の乱入に、まるで道を譲るように口をつぐまれてしまった。
「そんな気がしていたのよ。今まで興味も持たなかった携帯を持ちたいって言ったり、お出かけ前に鏡の前で長いこと身嗜みを確認したり。――あなたの想い人は職場にいらっしゃるの?」
お母様は私を咎めていらしている風ではなくて……。ただ純粋に私が好きになった方のことを知りたいだけみたいだった。
お父様が「話してご覧」と促すように頷いていらしたので、私は思い切って打ち明ける。
「あの……。私がお慕いしているのは……健二さんの……お兄様です」
緊張で身体が震えるのを一生懸命押さえながら、お父様とお母様のお顔を交互に見つめる。
すると、お二人がふっと優しいお顔になられた。
「修太郎くんか」
ややしてお父様が修太郎さんのお名前を出されて、私はそれだけでドキドキしてしまった。
「日織、あなた、彼の名前をお聞きしただけで真っ赤になるのね」
お母様が私の方へ近づいていらして、頭を撫でてくださる。
「は、はい……っ。わ、私。自分でもどうしたらいいか分からないくらい修太郎さんが好きなんです」
ハッキリとそう申し上げたら、お父様が瞳を見開かれた。