あなたに、キスのその先を。
 上座から神崎(かんざき)天馬(てんま)さん・宮美(みやび)さんご夫妻、修太郎(しゅうたろう)さん、修太郎さんの横に絢乃(あやの)さんが座っていらして、ケヤキの座卓を挟んだ向かい側奥から順に、うちの父、母、私が座っている。
 健二(けんじ)さんと佳穂(かほ)さんは、そのどちらの列にも加わらず、下座の、座卓の尺が短いほうへ座っておられて。

「健二、修太郎、皆を集めて話がしたいと言うのは何だ? そもそも何故健二がいるべき場所に修太郎がいる?」

 みんなが着座して、まず最初に口をお開きになられたのは天馬氏だった。

 挨拶など全てすっ飛ばして、単刀直入に用件に入られるところが、彼の生き様を表しておられるようで。私はその威圧感に思わずギュッと縮こまってしまう。
 お顔は何となく修太郎さんにも健二さんにも似ておられる天馬氏だけれど、身にまとう雰囲気(オーラ)がまるで違って。

 天馬氏は私や佳穂さんには見向きもなさらず、下座のほうに座っておられる健二さんと、私の正面に座していらっしゃる修太郎さんを交互に見比べてそうおっしゃった。
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