あなたに、キスのその先を。
 そんなことを考えていたら、いつの間にか身体に熱が(とも)ったようで、勝手に頬が熱くなってきます。

 熱に潤んで、涙がうっすら(にじ)んだ瞳で修太郎(しゅうたろう)さんをじっと見上げたら、彼がうっとりするような官能的な表情をなさいました。

「――脱がせる楽しみを残しておいてくださったんですね」

 そうおっしゃって、小さく生唾を飲まれたのが分かりました。

 修太郎さんの喉が小さく上下するのを見て、「今からこの人に食べられてしまうんだ」と直感的に思った私は、キュンとした切なさを感じました。

 そんな私の反応を知ってか知らずか、修太郎さんがもう一度口付けていらっしゃいます。

 私は、うっとりと目を閉じて彼のキスを受けました。

 くすぐったいような、ゾクッとするような、何とも言えない心地よさが、身体に広がってきます。

「修、太郎さん……大好きです……」

 私はキスの合間を縫うように、修太郎さんにそう告げました。

 想いを口にしなければ、私の中にある好きという感情が、身体の中一杯に溢れかえって、おかしくなってしまいそうです。
「僕も、日織(ひおり)さんが……、大好きです」

 修太郎さんが私の言葉に応えて下さったのが嬉しくて堪らなくなります。

 私は、痛くてもいいから修太郎さんとどうしてもひとつになりたい、と痛切に願ってしまいました。

 昨日無理だった分、絶対に今日こそは、と。

< 336 / 358 >

この作品をシェア

pagetop