あなたに、キスのその先を。
「日織」
お父様に、ポン……と肩を叩かれて、ハッと我にかえる。
「また、ぼんやりしていたのか?」
やけに長い電話に様子を見に来たらしい父が、呆れ顔でいう。
「あの……お父様。私、今までに健二さんとお話したこと、ありますか?」
思い切って聞いてみたら「幼い頃に彼の兄上も交えて逢っているだろう?」と言われた。
「健二さんの……お兄様?」
ぼんやりと問えば、父は静かにうなずいた。
「日織は兄上にひどく懐いてお兄ちゃん大好き!と付き歩いていたぞ?」
思わず「え?」と声が漏れてしまった。
(ダメ。全然記憶にないのですっ)
健二さんのことも覚えていないのだから、無理はないのかも知れないけれど、何となく忘れてはいけないことを忘れてしまっているような、モヤモヤとした気持ちが胸の中にわだかまった。
(もしかしたら……健二さんの声に聞き覚えを感じてしまったのは、心の奥底で眠っている彼のお兄様とリンクしてのことかも知れないのですっ)
そう、思った。
お父様に、ポン……と肩を叩かれて、ハッと我にかえる。
「また、ぼんやりしていたのか?」
やけに長い電話に様子を見に来たらしい父が、呆れ顔でいう。
「あの……お父様。私、今までに健二さんとお話したこと、ありますか?」
思い切って聞いてみたら「幼い頃に彼の兄上も交えて逢っているだろう?」と言われた。
「健二さんの……お兄様?」
ぼんやりと問えば、父は静かにうなずいた。
「日織は兄上にひどく懐いてお兄ちゃん大好き!と付き歩いていたぞ?」
思わず「え?」と声が漏れてしまった。
(ダメ。全然記憶にないのですっ)
健二さんのことも覚えていないのだから、無理はないのかも知れないけれど、何となく忘れてはいけないことを忘れてしまっているような、モヤモヤとした気持ちが胸の中にわだかまった。
(もしかしたら……健二さんの声に聞き覚えを感じてしまったのは、心の奥底で眠っている彼のお兄様とリンクしてのことかも知れないのですっ)
そう、思った。