あなたに、キスのその先を。
 うっとりつぶやかれると、
「まさか貴女から僕を王子様に例えて頂けるとは思いもしませんでした」

 そこで修太郎さんは私の剥き出しの肩に口づけを落とされる。
「あ……っ」
 不意打ちに、思わず声が出てしまって、私は慌てて口元を押さえた。

「姫君様、僕は貴女の王子様でい続けられていますか?」

 問いかけられた言葉は恥ずかしいほどに乙女チックな内容だったけれど、修太郎さんのお声は至極《しごく》真剣で。

 私は視線を落としたまま、それでもはっきりと「はい、もちろんです」と(うなず)いていた。

「ホッとしました」
 おっしゃって、修太郎さんは私の肩に小さく(あざ)が残るように吸い付いていらっしゃる。

 チクリとした甘やかな痛みに、私は思わず「んっ」と声を出して反応してしまった。
< 349 / 358 >

この作品をシェア

pagetop