あなたに、キスのその先を。
「――えっと、今までお気づきになられていなかったのですか?」
聞けば、
「はい。そうなんですっ。おかしいですよね? 自分の手のことなのにっ!」
この娘は、なんて幸せそうな顔をして笑うんだろう、と修太郎は思った。そう思うと、目の前の日織のことが愛しくて愛しくてたまらなくなる。
「気づけて、よかったですね」
彼女の前髪をかき分けてそっとおでこにキスを落とすと、修太郎も彼女につられて笑顔になる。
時折こんな風に突拍子もないことを言っては、とびきりの笑顔を向けてくれる日織のことが、修太郎は本当に可愛いくて、どうしようもなくなってしまう。
自分は何でもないことだと見過ごしていたことが、日織の目を通すと、すごいことに思えてしまうから不思議だ。
「僕にも日織さんの大発見、実感させてください」
言って、日織の小さな手を、再度そっと自分の手のひらで包み込むと、修太郎は自分の手ごと彼女の手指を開いたり閉じたりしてみる。
確かに、日織さんの言う通りですね……。
そんなことを思いながら。
END(2020/02/06)
聞けば、
「はい。そうなんですっ。おかしいですよね? 自分の手のことなのにっ!」
この娘は、なんて幸せそうな顔をして笑うんだろう、と修太郎は思った。そう思うと、目の前の日織のことが愛しくて愛しくてたまらなくなる。
「気づけて、よかったですね」
彼女の前髪をかき分けてそっとおでこにキスを落とすと、修太郎も彼女につられて笑顔になる。
時折こんな風に突拍子もないことを言っては、とびきりの笑顔を向けてくれる日織のことが、修太郎は本当に可愛いくて、どうしようもなくなってしまう。
自分は何でもないことだと見過ごしていたことが、日織の目を通すと、すごいことに思えてしまうから不思議だ。
「僕にも日織さんの大発見、実感させてください」
言って、日織の小さな手を、再度そっと自分の手のひらで包み込むと、修太郎は自分の手ごと彼女の手指を開いたり閉じたりしてみる。
確かに、日織さんの言う通りですね……。
そんなことを思いながら。
END(2020/02/06)