『191ヶ月13日の命』
3月3日(月)に彼の地元である伊丹でお通夜が営まれました。

私の学校では、この日から学校の修学旅行でニュージーランドに出発でしたが、私はとても行く気持ちにはなれず、彼の母上様からも「是非ニュージーランドの方へ行ってほしい、義も絶対に喜ぶから」と言って頂いたのですが、私はこれ以上の後悔を残したくない、本当の最後まで彼の近くに居たいと思い、彼や彼の御家族、自分の家族や学校の友達、先生方に我儘を受け入れて頂き、彼のお見送りを決めました。

会場に着くと、彼の御親族・御友人、学校関連や野球関連の多くの方が参列されており、本当に彼は皆に愛されていると改めて感じました。

そして翌日3月4日(火)、お通夜が営まれた場所で告別式が行われました。
この日が本当に彼との最後。
火葬された彼を、御親族の方と一緒に迎えに行かせて頂きました。

私が大きくなってから、自分の周りで人が亡くなる事は彼が初めてだったので、彼の綺麗な遺骨を目の当たりに"これが現実なんだ"と予想以上に辛くなり、衝撃が大きかった事を今でも憶えています。

彼の「死」を私はその時、初めて実感しました。
小刻みに震えてしまう身体を必死に抑えながら、遺骨を入れさせて頂き、心の中で何回も"本当にお疲れ様、今までありがとう"と繰り返し言いました。

約2週間前まで誰とも変わらないごく普通の学校生活を送っていた彼の姿は、この日で遺骨になってしまいました。しかし、最後まで沢山の方々に見送られ、沢山の方々に愛され、本当に幸せだったと思います。

そして何よりも、最後の最後まで彼は私達に夢や希望を与えてくれ、大切なメッセージを遺して旅立って逝きました。

そのメッセージこそが、普段日常生活の中で目には見えない1番大切な『生きる力』と『命の大切さ』です。

多忙な日々を送る中で私達が忘れがちな『生』や『命』は学校で学ぶ国語や算数、社会、理科などといった科目とは違い、決まった教材があったり、人から学んだりするのではありません。

しかし、義務教育といった法律で定められた事柄と同じで、私達が母親のお腹にいる時から既に生きる事を義務付けられ、生まれてから死ぬまでが『生きる』事の学びではないかと私は考えています。

社会制度・法制度などは国によってそれぞれ異なる中で、人の『生』や『命』については、生涯自らの人生で学ぶものであるという事は全世界どこでも同じだと思っています。

人生に息詰まった時や苦しい時など、生きている意味が分からなくなってしまう事は誰もが一度は経験する事かもしれません。
もしそんな辛い時、悲しい時、苦しい時に"死にたい"と思う弱い人間にだけは絶対になってはいけないと思います。
私も今まで自分なんてこの世の中に必要ないと思ったこともありましたが、そんなに簡単に"死にたい"などと絶対に思ってはいけないと彼から教わりました。

私が悩んだ時、どんな時でも、ボロボロになる前に彼はいつも話を聞いてくれて励ましてくれました。
一人っ子で育った私は我儘な性格もあり、周りが見えてない事も多くありました。その点、彼は三兄弟の長男でしっかりしており、ただ話を聞くだけではなく、わたしを沢山成長させてくれました。

彼に教えてもらった事、私はこの先どんな事があっても絶対に忘れません。

彼が叶える事の出来なかった大きな夢を、私はこれから頑張って叶えようと思います。そして何よりも1番大切な事、それは彼の分も強く生きる事です。

ちょっとした事がこのような大事故に繋がるなど誰も予想していませんでした。

彼にはお金では買えない、目には見えない大切な心を教えてもらいました。

今、自分が生きている事が本当に幸せで素晴らしいという自信を持ち、自分を産んでくれた母親に感謝するとともに、これから先どんなに苦しい事や辛いことがあっても諦めず、元気に一日一日を大切に生きる事が天国に逝った彼に対する"恩返し"だと思います。

彼を失った事により、私はそれ以上に沢山得たものがありました。

今まで彼が残してくれた沢山の思い出を絶対に忘れず、沢山の命が存在する世の中で彼と出逢えた事の喜びと感謝を絶対に絶対に忘れません。そして彼から学んだことーー自分の心をいつも強く持ち常に何かに挑戦していくことーーを絶対に実現させたいと思います。

彼が亡くなり後悔する事が多かったのですが、後悔をして彼の命が戻ってくるわけではありません。
彼にしてあげられる恩返しは後悔をする事ではなく、1日でも早く前向きに彼の分まで強く生き、天国に居る彼に笑顔を見せる事で彼に早く安心してもらう事だと思います。

これから先、後悔をしない為にはどうするべきか、同じ過ちを繰り返さないためにはどう過ごせば良いのか、そしてどの様に生きていけば良いのか…。

後悔をする事はすごく悔しい事ですが、後悔する事により考える力が与えられ、考え方によって、それが大きく成長出来るチャンスに繋がるという事を初めて知りました。
過去に戻りたい…と望む事は数え切れないほど沢山ありますが、今一つでも願いが叶うのなら彼の命を返してほしい。特別なぜいたくは要らない。出逢った頃の様に普通に元気な姿に戻してほしい。
ただそれだけで良い…。
でも現実は厳しく、ただの夢物語に過ぎない。
私達には見る事の出来ない未知の世界に逝った彼には、前と変わらず、ずっとずっと笑って強く生きていて欲しい。

大好きだった野球をずっとずっと続けていますように…。

そして彼の事を想っている沢山の仲間がここに居るという事をずっと忘れないでほしい。

たくさんの思い出をありがとう。
たくさんの笑顔をありがとう。


1992年3月16日 誕生
2008年2月29日 永眠
< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop