私のおさげをほどかないで!
 寧ろ奏芽(かなめ)さんの声にドキドキと胸が高鳴って、「そんなのいちいち言わなくても分かるでしょ!?」とか速攻で憎まれ口をきいてしまっていた。

 それは同時に“脈ありです”って叫んでいるのと一緒で――。

「なぁ凜子(りんこ)。知ってっか? 気持ちはちゃんと相手に伝わるように言わねぇと意味ないんだぜ?」

 売り言葉に買い言葉みたいに勢いで言ってしまってから、にわかに恥ずかしくなってうつむいた私に、

「――そんなひねくれた言い方じゃ、俺、脈なしだったか、残念って()()()()()()ぞ?」

 そう付け加えて奏芽さんが意地悪く笑う。

 脈なしを誤解だと決めつけてる時点で分かってるじゃない。本当、意地悪な人。

「な? 凜子。だからさ、お願い。……俺にも分かるようにちゃんと言って?」

 いつも押し付けがましいくらいに自信満々な物言いのくせに、何で今回だけそんな柔らかな言い方でおねだりしてくるの?

 ズルイよ……。

 そんな風に言われたら私――。
< 101 / 632 >

この作品をシェア

pagetop