私のおさげをほどかないで!
「――とりあえず、車行くぞ」

 言って、私を抱きしめていた腕をほどくと、代わりみたいに手を引いて、奏芽(かなめ)さんが歩き出す。

 私はそんな彼の背中をじっと見つめながら、小走りで付き従って。

 いつもの奏芽さんなら、私の歩幅なんかを考えてもう少しゆっくり歩いてくれる。
 でも、今はそれどころじゃないのかな。

 ちょっと走らないと付いていけないくらいの速度で、グイグイ私を引っ張って歩くの。

 そんな私たちの動きをいくつもの好奇の眼差しが追ってきたけれど、私、不思議とそれが気にならなかった。
 というより……奏芽さんの言葉と、日頃とは違う雰囲気に気圧(けお)されて他のことが考えられなかった、というのが正しいかな。

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