私のおさげをほどかないで!
***
「よ、雨宮。――予告通り来たぞ」
私たちが入店した気配に、板場の中からチラッとこちらに視線を流してきた男性に、奏芽さんが気やすげに声を掛けた。
店内には私たちの他にはお客さんの姿は見えなくて、本当に入っても良かったのかな?とドキドキしてしまう。
「何だ、本当に連れがいるのか」
私の方を見て眉間に皺を寄せる男性に、何となく咎められた気がして、思わず奏芽さんの背後に隠れる。
「おい、そんな無愛想な顔で見てくるなよ。彼女が怖がってんだろ」
奏芽さんの言葉に、店主さんはバツが悪そうにふっと視線を落とすと、「申し訳ない」と素直に謝って下さって。
その生真面目さに、自分と近しい気配を感じた私は、少しだけ緊張の糸が緩む。
「鳥飼がここに誰かを連れてきたことなんて、俺がここを開店して以来初めてだったもので……ついまじまじと見てしまった。――すまない」
朴訥、という言葉がしっくりくる人だな、と思った。
長めの金髪がキラキラと目に眩しくて、飄々とした雰囲気の奏芽さんとは対照的に、雨宮さんは黒髪・短髪に、キリッとした少し濃いめの眉毛。
髪の毛も、板前然とした白の和帽子から出ているところは綺麗に刈り上げられていて、とてもお堅そうに見える。
七分袖の真っ白な法被姿も、如何にもキチッとしていて、謹厳そのものに見えた。
「よ、雨宮。――予告通り来たぞ」
私たちが入店した気配に、板場の中からチラッとこちらに視線を流してきた男性に、奏芽さんが気やすげに声を掛けた。
店内には私たちの他にはお客さんの姿は見えなくて、本当に入っても良かったのかな?とドキドキしてしまう。
「何だ、本当に連れがいるのか」
私の方を見て眉間に皺を寄せる男性に、何となく咎められた気がして、思わず奏芽さんの背後に隠れる。
「おい、そんな無愛想な顔で見てくるなよ。彼女が怖がってんだろ」
奏芽さんの言葉に、店主さんはバツが悪そうにふっと視線を落とすと、「申し訳ない」と素直に謝って下さって。
その生真面目さに、自分と近しい気配を感じた私は、少しだけ緊張の糸が緩む。
「鳥飼がここに誰かを連れてきたことなんて、俺がここを開店して以来初めてだったもので……ついまじまじと見てしまった。――すまない」
朴訥、という言葉がしっくりくる人だな、と思った。
長めの金髪がキラキラと目に眩しくて、飄々とした雰囲気の奏芽さんとは対照的に、雨宮さんは黒髪・短髪に、キリッとした少し濃いめの眉毛。
髪の毛も、板前然とした白の和帽子から出ているところは綺麗に刈り上げられていて、とてもお堅そうに見える。
七分袖の真っ白な法被姿も、如何にもキチッとしていて、謹厳そのものに見えた。