私のおさげをほどかないで!
***

「そういやこの前、霧島(きりしま)音芽(おとめ)ちゃんと来たぞ」

 奏芽(かなめ)さんが照れていることなんてまるで気付いていないのか、はたまたお構いなしなのか。ふと思い立ったとばかりに雨宮(あまみや)さんが言って、奏芽さんが「ああ、俺が娘を預かってやったからな」と答える。

 そこで、所在なく立ち尽くしたままになってしまっていた私に視線を寄越した奏芽さんが、「ほら、寿司屋で会った日に俺が連れてた女の子の両親な?」と補足して下さる。

 奏芽さんの姪っ子ちゃん。確か名前は――。
和音(かずね)ちゃん……」
 思い出したままに何気なくつぶやいたら、「凜子(りんこ)、ホント記憶力いいな」って褒められた。


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