私のおさげをほどかないで!
***


「ま、そんなところに突っ立ってないで、とりあえず座れよ」

 雨宮さんに促されて、奏芽さんが「ああ」と言って、私に「おいで」と声をかけてくれる。

 奏芽さんの妹さんや幼なじみさんのお話、もう終わりなのかな?

 私の知らない奏芽さんのことをもう少し知りたくて、誘われるままにカウンター席に座りながらも、催促するみたいにちらりと雨宮さんを見つめる。

 雨宮さんはその視線を、私が手にしたままだった荷物の置き場に戸惑っていると受け取ったらしい。

「カウンター下が棚になってる……」
 ポツンとそれだけ言って、黙ってしまった。

 う〜。残念。

 私から水を向けるのも変な話だし……奏芽さんもあれ以上はさっきのことを話すつもりはないのか、ふっつりとその会話は途切れてしまったの。
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