私のおさげをほどかないで!
 さっき雨宮さんが奏芽さんのことを「遊び人の鳥飼(とりかい)」って揶揄(やゆ)していらしたけれど、そういう浮き名が通っていたのも分かる気がした。

 こういう、(おもむ)きのあるお店が、どんなものを提供してくれて、一体ひとつひとつの料理がおいくらぐらいの金額設定になっているのかしら?とふと気になった私は、「見てもいいですか?」と奏芽さんに差し出されたお品書きを手に取った。

 別に奏芽さんが言った通り、雨宮さんのお勧めで一向に構わないのだけれど……ちょっとした好奇心。

 はらりと広げたお品書きは、店主さんの立ち居振る舞いそのままに、手でちぎったみたいな風合いの耳付き和紙。
 厚手のそれを二つ折りにして、墨でさらりと品名が並んでいるだけといういかにも実直な雰囲気で。
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