私のおさげをほどかないで!
 しかも……金額、書かれてない……とか……。
 え!? なに、なに?
 こういうお店って基本的に時価おいくらの世界なの?
 金額とか気にしちゃうのは無粋(ぶすい)なのぉーっ!?

 十代の小娘には、一皿100円でクルクルとレーンを回っている様なお寿司の方が、お支払金額を計算しやすくて安心できそうですっ。

 ソワソワと奏芽(かなめ)さんを見つめたら、「ん?」って感じで顔を見つめられた。
 次いで、私の表情に驚いたみたいに
凜子(りんこ)、何でそんな親猫とはぐれた子猫みたいな目になってんだよ」
 って慌てるの。

 そりゃ、お値段の見通しが立たない不安で、迷子の子猫ちゃんにもなりますよ。
 だって……金額不明ですよ?
 奏芽さん、分かってます?

 常連さんなのだから、彼にはこのぐらい食べたら大体おいくら的な相場がインプットされているのかもしれない。
 でも私にはないのです。
 分かってますか?


「……初めて見た時から思ってたんだけど――」

 と、そこで今まで私たちのやりとりに口を挟まなかった雨宮(あまみや)さんが、堪えきれなくなったみたいに唐突に声をかけてきて。

 私たちは思わず雨宮さんの方を見た。

「彼女、雰囲気が音芽ちゃん(お前の妹)に似てるよな?」

 雨宮さんの言葉に私は眺めていたお品書きから顔を上げると、思わず右隣に座る奏芽(かなめ)さんの方を見つめてしまった。
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